10日間の有給休暇が、会社員を映画監督に変えた。「遠回り」だと思った道が夢に通じていた。

長久允さん。三つ編みのお下げがトレードマークだ

貧困をなくし、みんなが平等に、平和に生きられる世界を目指す「SDGs」。2015年の国連サミットで採択された「持続可能な開発目標」のことで、「貧困をなくそう」「不平等をなくそう」といった17個の目標がある。

ちょっと難しそうなイメージもあるが、実は働く世代に関わる目標も含まれている。それが目標8番の「働きがいも経済成長も」だ。「すべての人が働きがいのある、人間らしい仕事をできるようにする」ことを目指している。

そんな働き方って、どうやったら実践できるんだろう?

電通のCMプランナーとして忙しく働きながら、長年の夢だった映画監督に挑戦した長久允(ながひさ・まこと)さん(34)に、好きなことを続けられた理由を聞きに行った。

 

■「決してスタークリエイターじゃなかった」

長久さんは2007年に電通に入社し、CMプランナーとして活躍してきた。10日間の有給休暇を使って撮影した短編映画「そうして私たちはプールに金魚を、」が、2017年に若手の国際的な登竜門として知られる「米サンダンス映画祭」の短編部門でグランプリを獲得した。その後、会社に身を置きながら、業務として映画を作る道を自ら切り開いた。今年6月には、初の長編映画「ウィーアーリトルゾンビーズ」が公開された。

一見華々しく見える経歴。だが、「そうして私たちはプールに金魚を、」を撮ったのは、自分のキャリアに深く悩んでいた時期だったという。

2012年8月。埼玉県狭山市で、中学校のプールに大量の金魚が放流される「事件」があった。その後、夏祭りの売れ残りの金魚を譲り受けて放流したとして、女子中学生4人が建造物侵入と器物損壊の疑いで書類送検された。

「プールに400匹の金魚、女子中学生『一緒に泳いだらきれいだと思って』」

Yahoo!ニュースのトピックスに載ったそんな趣旨の見出しが、長久さんの目に飛び込んできた。

当時、クライアントから信頼を得て、忙しく働いていた。「決してスタークリエーターではなかった」というが、クライアントのメッセージを翻訳し、より広く伝えるというプランナーの仕事にまい進していた。

ただ、もともと映画が好きで、趣味でシナリオも書いていた。「このまま仕事を続けていて良いのか」と悩みながらも、行動を起こせずにいた。そんななか目に入った中学生の思い切った行動が、強く印象に残った。

「本当に『きれいだと思ったから』と言ったのかな、大事な動機は他にあったんじゃないかなと思った。わかりやすく、ニュースになりやすい言葉が1行に凝縮され、消費されていく感覚があった。この1行に入らなかった思いを映像化したいという使命感が、勝手に生まれたんです」

実際に狭山市で取材を重ねてシナリオを作った。10日間の有給休暇で撮影したデビュー作がいきなり、国際的な評価を得た。

■育休中、コンビニでシナリオを書き上げた

それから、会社の幹部にかけあって部署を異動。業務として映画制作ができる環境を自ら切り開いた。

「自分自身をプレゼンテーションすることは初めてだったけど、十年も会社でプレゼン能力を鍛えてもらっていましたから、理解してもらえました」

2作目の「ウィーアーリトルゾンビーズ」の着想も、実際に起きた事件のニュースからだった。

そのニュースは、何者かがSNSを通じて若者らに指令を出すゲームで、最終的には自殺を促され、ロシアなどで多くの自殺者が出たという衝撃的なもの。

「ニュースを見て、何かに悩んでいるローティーンの子たちを救うことができないかと、考えずにいられなかった」

当時は育児休暇中。妻と時間を調整し、1日30分間だけ近所のコンビニのイートインコーナーでシナリオを練る時間をつくった。1カ月半ほどで書き上げた。

■あいまいさやユーモアが人を救うこともある

映画「ウィーアーリトルゾンビーズ」

物語はこんな内容だ。事故や自殺で両親を亡くしたばかりの中学生4人が偶然出会う。悲しいはずなのに泣けなかった「ゾンビ」みたいな4人が、ひょんなことからバンドを組む。バンドは大きな社会現象になるが、運命に翻弄された4人は、冒険の途中で、何かを見つける――。

同作は米サンダンス映画祭で審査員特別賞を日本人として初めて受賞。ベルリン国際映画祭では、若者向け映画を対象とした「ジェネレーション14プラス部門」で特別表彰を受けた。

日本国内でも6月から全国公開が始まった。当初、観客動員数はふるわなかったというが、一度上映が終わった地域でも、反響が広がってミニシアターで再上映が始まったところもあるという。

印象に残ったのは、10代の子どもの親からの反応だという。「うちの子に見せたら楽になったみたい」「映画を見た後、久しぶりに子どもと会話が出来た」と感想が寄せられた。

 

映画「ウィーアーリトルゾンビーズ」

1作目も2作目も、主人公は生きづらさを抱える10代の子どもたちだ。

「僕自身、中学生くらいのときに色々と悩んでいたんですが、時にはユーモアやニヒリズムに逃げて、何とか絶望感に対峙せずに済んだんですよね。そういう経験を、映像に落とし込めないかと思った」

「ウィーアーリトルゾンビーズ」では、子どもが親からの暴力に苦しむ場面もある。

「子育てしていて思うのは、子どもの豊かな感情を親や社会が抑えたり、評価したりするのはおかしいということ。子どもはそのままで良いんだよというまなざしを、伝えたかった」

「クラスにいる30人のうち、たとえ28人には刺さらなくても、悩みを抱えている2人に何かを感じてもらえたら、うれしい」

 

映画「ウィーアーリトルゾンビーズ」

劇中で子どもたちは、親の死という絶望的な状況に直面しながらも、その状況を客観視したようなひょうひょうとした表情を見せる。

あいまいさや、ユーモアが人を救うこともありますよね。でも社会の風潮として、『夢を持とう』『ポジティブでいよう』と声高に言われる。そうじゃなくても良いと思うんですよね。とにかく絶望さえしなければ良いと思う」

「今の世の中、はっきりと言語化できるコンテンツしかないような気がして。僕は作り手の責任として、あいまいさやユーモアを表現することを狙っていきたい」

■取材を終えて

私は長久監督と同世代。会社員として働いていると、当然ながらいつも自分がやりたい仕事だけができるわけではなく、「自分がやりたいことって何だったのかな?」と悩む場面に何度も直面します。

でも、目の前の仕事に追われているうちに、次第に考えることをやめてしまいがちで…。

映画に挑戦するまで、「これで良いのか」と悩み続けてきた長久さんですが、広告の現場で鍛えられたプレゼン力やプロデューサー的な視点が、いま、映画のプロモーションの場面でとても役に立っていると言います。

長久さんのこんな言葉が印象に残りました。

「遠回りだし、道はそれていると思っていた。でも結果を見てみると、この道を通らなければ映画監督になれなかったと思う」。

「遠回りに見えても、無駄なことはないのかも」。そう思うと、少し気持ちが楽になりました。

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【今夜放送】『カメラを止めるな!』を見ていない人間がストーリーを真面目に予想したら…想定外の展開になった / 本日3月8日の金曜ロードショーはカメ止め!

今夜のキンローはカメ止め! ……だそうだ。もう少し丁寧に言うならば、本日2019年3月8日、『カメラを止めるな!』が「金曜ロードSHOW!」で放送される。地上波初登場で、完全ノーカット。時間は21時からだ。また、放送中は監督・出演者が副音声で解説し、撮影の裏話などを披露するとのこと。

さて、『カメラを止めるな!』といえば、予想を裏切る展開が特徴の1つだろう。実際、同作を映画館で見た私は、“あのシーン” で「そうやったんかい!」となり、ラストでは「オチすげーーーー」となり、制作側の術中に見事にハマってしまったのが……ふと気になったのは「誰にとってもそうなのか?」ということ。

もしかして、ポスターをしっかり見れば何となく展開の予想がつくんじゃないの? という気もしたので、『カメラを止めるな!』を見たことがない4人に、ポスターと簡単な予備知識だけでストーリーを予想してもらった。すると……それもまた私の予想を裏切るものだったので報告したい。

どう裏切るのかを明かすとネタバレになってしまうので、予想した人物とその内容だけをサラッと紹介しよう。

・カメ止めを見たことがない4人

まず、回答者は当編集部の原田たかし田代大一朗あひるねこYoshio、の4人。性格はバラバラだが、『カメラを止めるな!』を見たことがないという点では共通している。

なお、もしその4人の中に正解者がいた場合、必然的にネタバレになってしまう。なので、まっさらな気持ちで映画を見たいという人は、ここで引き返した方がいいだろう。「今夜のキンローはカメ止め!」とだけ覚えておいてくれたら十分だ。

一方、すでに映画を見たことがある人、「ネタバレになっているかどうか分からないんだったらOK」という人、もしくは「ロケットニュースのヤツらに予想できるわけがない」と踏んだ人だけ、以下を確認してくれ。

というわけで、話を進めよう。それぞれの予想は、こんな感じであった。

・原田たかしの予想

「ポスターに写っている女性がバレーのレシーブのような格好をしているように見えるので、おそらくスポ根映画なのかな……と前までは思っていた。ただ、よく見たら手に持っているのはオノ。そうなってくると、原始時代から現代までの歴史を凝縮したものだろう。

ところどころで偉人や有名人が再現され、壮大なストーリーとなっているはず。予算があまりない状態で製作したとは聞いているので、撮影時のアクシデントも多かったと思われる。だが、そこはカメラを止めるな。ノンストップ編集でありのままを表現していると予想する」

・田代大一朗の予想

「まずポスターから察するに、この映画はゾンビもので間違いないと思う。人間に襲いかかるゾンビたちから逃げ回り、なぎ倒す。そして最後まで生き残る。うんうん、大体のあらすじはこんな感じのはず。だが、ここで引っかかるのが、タイトルの『カメラを止めるな!』

う~ん、主人公たちはスクープを血眼で探しているカメラクルー? スクープが見つからず手ぐすねを引いて待っていたら、ある日、運よくゾンビたちが町中に湧いてきた……そう、これぞ待っていた世紀の衝撃映像!! 止めるな、カメラを止めるな! というストーリーなのだろう。

となると、最後のオチは『ジャーン! これはドッキリ企画で、ゾンビは全部ニセモノでした~』となる……のかな?」

・あひるねこの予想

「主人公らしき男性が持っているカメラから察するに、きっと彼らは映画を撮っているのだろう。おそらくこの作品同様、低予算のB級映画だ。B級映画と言えばゾンビ。これは間違いない。

で、トラブル等で現場がグダグダになったところに、本物のゾンビが現れてパニックになるものの、臨場感優先でそのまま狂気の撮影続行! 的な流れではないかと予想する。だがオチが分からない……。

結局死人も出てメチャクチャになりながら撮影は終わるんだけど、スタッフ全員が「今ならもっといい画が撮れる!」とか言い出して、ゾンビと一緒に最初から撮り直すみたいな?」

・Yoshioの予想

「私は、交通事故で死んだ。目をさますと私はゾンビになっていた。マジかよ。人間の世界でどう生きればいいのか。私は仕事を得るために、ゾンビ映画のエキストラに応募して生計を立てようとした。だが、何度面接を受けても本物の私が怖すぎるのか、誰も採用しない。

仕方ないので、ビックカメラでカメラを1つ購入し、私が監督としてゾンビ映画を撮ることにした。外見が怖すぎるため、メイクをして見た目は人間になった。お金がないので、学生の役者を採用し、ゾンビがゾンビ映画を撮ることになったのだ。「カメラを止めるな!」そう天から聞こえたように思えた。

だが、何度撮影してもイマイチ。ゾンビの恐怖や逃げまどう人間の恐怖が、全く伝わってこないのだ。私はついにキレた。「お前らやる気あんのか」と。するとその勢いで私のメイクは全て落ち、ゾンビであることがバレて、みんなが早々と逃げていった。

これが大体的なニュースになり、私は生きるすべを無くした。今ままでやってきた努力はなんだったのか。だが、ある時、携帯が鳴る。そう、連絡は映画会社からで、なんと「ゾンビが撮ったゾンビ映画」で売り出したいとのこと。

マジかよ、もちろん私はOKの返事を出すと、その後、この映画は爆発的に売れることとなった。そう、ゾンビが奇跡を起こした瞬間だったのだ。めでたしめでたし」

──以上である。果たして、この中に “当たり” の予想はあるのだろうか? 結果は……今夜9時からのキンローで確認してくれ。

参考リンク:金曜ロードシネマクラブ
Report:和才雄一郎
Photo:(C)ENBUゼミナール / RocketNews24.

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