「第三帝国で最も危険な男」の暗殺計画を描く映画『ナチス第三の男』 原作者が語る”物語の力”

小説の可能性を広げた作品として、世界中で大絶賛されたローラン・ビネ『HHhH プラハ、1942年』が映画化された。ナチスの主要人物で、「第三帝国で最も危険な男」ラインハルト・ハイドリヒ暗殺計画を描き、映画化権が争奪戦になった。邦題は『ナチス第三の男』だ。映画について、ビネは「小説と別物ではあるけれど素晴らしい映画」と評した。

史実を描くとはどういう意味を持つのか。小説の力とはなにか。ローラン・ビネがメールインタビューに応じた。

ローラン・ビネ氏

ナチスによるユダヤ人大量虐殺の首謀者の1人、ラインハルト・ハイドリヒ。彼は、ヒトラー、ヒムラーに次ぐナチス”第三の男”で、ヒムラーの右腕と呼ばれ恐れられた。

チェコ政府によるハイドリヒ暗殺計画が進行し、二人の青年によって決行された。結果的に彼はナチス高官で唯一、暗殺された幹部になった。史実に残る暗殺計画をどう描くのかーー。

ビネは小説にかけた時間をこう振り返る。

《小説を書くのに10年かかりました。そのほとんどがリサーチのためです。この物語に関するあらゆる文献を読み、ハイドリヒやナチスや第二次世界大戦に関するもので見つけることができたものにはすべて目を通しました。

小説でも、映画でも、あらゆるフィクションを含めて、カードゲームの「ユークロニア」さえチェックしました。》

チェコの歴史家ミロスラフ・イワノフが集めた口述書をはじめとする史料を参照し、現場に足を運びながら、彼は1942年に暗殺が決行されたプラハを再構築する。

《暗殺自体が驚くべき物語なので、まず、そこにフォーカスを当てたかったのです。そののち、ハイドリヒの出世もまた驚くべき物語だと気づきました。両方とも、西ヨーロッパではあまり知られていなかった。それでその二つについて書くことに決めたのです。

私の小説は、どうすれば真実の物語が書けるのか、ということにこだわっている。》

彼にとって文学はとてもパワフルなツールなのだという。どんなツールも良く使うことも、悪く使うこともできる。

歴史を「物語」として描く。そこで感じる小説と歴史的史料の差はなにか。ビネはこんな言葉を返してきた。

《フランス語では、歴史も物語も同じ単語« histoire »です。でもその二つは違うものです。歴史は調べて正確に語ることが難しいけれど、決して忘れるべきではない。”それが起こった”からです。

そしてそれに対処しなくてはならない。ルールは、決して起こらなかったフリをしてはならないということです。でもそれは、フィクションを用いてはならないという意味ではありません。あるいは、歴史で遊ぶなという意味でもない。

私は、例えば、ユークロニアが大好きですが、それは”もし~だったら”というゲームだからです。ゲームです。でももしナチスが戦争に勝ったと真剣に言い張ったとしても、それはただのフェイクニュースにすぎない。》

小説は映画化希望が殺到した。映画をどう観たのか。

映画「ナチス第三の男」より

《私は映像に感銘を受けました。私が頭の中で考えていたことが、突然スクリーン上で形になったのです。音楽と、生身のキャラクターたちとともに……もちろん、両者のビジョンが完全に一致したわけではありませんが、それは問題ではありません。》

歴史を真実の物語ではなく、安直なフィクションとして書く本が売れる社会で、ビネの真摯な姿勢、そしてナチスを描いた映画はどう受け入られるのか。公開は1月25日から。

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