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アメリカ映画はいつも政治の季節?

 アメリカ映画には政治や社会を正面から扱った作品が数多く存在します。過去や現在を描いたものを問わず、アメリカ映画史には“大統領映画”というジャンルとして名づけられそうなくらい、国のトップを描く作品が膨大に作られてきました。そのなかからジョージ・W・ブッシュ、バラク・オバマ、ドナルド・トランプという近年の大統領と映画の関わりを見ていきます。

トランプ時代に生まれる映画

 現地時間2月23日に発表された第39回ゴールデンラズベリー賞(ラジー賞)で最低男優賞を受賞したのは、『デス・オブ・ア・ネーション(原題) / Death of a nation』『華氏119』に登場した現アメリカ大統領のドナルド・トランプでした。また、最低助演女優賞にケリーアン・コンウェイ米大統領顧問が選ばれるなど、映画の賞にもかかわらず政権への批判意識が反映された結果となったのです。ほかにも、本家アカデミー賞、ゴールデン・グローブ賞、トニー賞の授賞式のスピーチでもトランプへの批判が行われるなど、リベラル派の多い映画業界やエンターテインメントの世界では現大統領の存在は“民主主義の敵”として見逃すことはできないものとなっているようです。

『華氏119』 – (C) 2018 Midwestern Films LLC 2018

 トランプ大統領にラジー賞受賞をもたらした『華氏119』は、自ら突撃取材を行うスタイルで知られるマイケル・ムーア監督によるドキュメンタリー。トランプの大統領就任への懐疑や憤怒から出発し、アメリカが抱える問題へと切り込んでいきます。トランプによる独裁政権への警鐘のみならず、高校での乱射事件、水質汚染問題、民主党への批判なども盛り込まれ、以前よりも客観的な視点で描くムーア監督の手腕が光ります。

 そんななか日本でも注目を浴びたのが、ジョージ・W・ブッシュ政権下で副大統領を務めたディック・チェイニーの半生を描いた『バイス』(4月5日公開)です。チェイニーを演じるために髪を剃って20キロ増量したというクリスチャン・ベイルや、ブッシュにあまりにそっくりなサム・ロックウェルなど、役者の本気を見ることができる本作。ここでは強大な権力を手にし、行政府の優位を維持するために秘密主義をとるようになったチェイニーの姿が告発されています。マッケイ監督は、トランプより恐ろしいのは表に出ないチェイニーだったのだと伝えています。

ジョージ・W・ブッシュと映画

 『バイス』のようにトランプ政権に通じる民主主義の危機を描く作品として『記者たち 衝撃と畏怖の真実』(公開中)があります。2002年、イラク戦争のさなかにあらゆるメディアが「サダム・フセインは大量破壊兵器を保有している」という“事実”を疑わないなか、真実を求め続けた実在のジャーナリストたちの姿を追っていきます。メガホンを取ったロブ・ライナー監督はケネディ暗殺直後に大統領に就任したリンドン・B・ジョンソンを主人公にした『LBJ ケネディの意志を継いだ男』(2016)も手がけています。

『記者たち 衝撃と畏怖の真実』 – (C) 2017 SHOCK AND AWE PRODUCTIONS, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.

 興行的には成功したムーア監督のブッシュ大統領を風刺した『華氏911』は、2004年に発表されました。この作品でブッシュ大統領はトランプに先んじてラジー賞を受賞することとなります。このように直接大統領を名指しで批判する映画のほかに、ブッシュ大統領を描いた作品としてはオリヴァー・ストーン監督の『ブッシュ』(2008)があります。それまでケネディやニクソンの伝記映画を撮ってきたストーン監督が現職の大統領に挑んだ意欲作です。

 『ブッシュ』では大統領の心理的な側面にスポットを当てて、父へのコンプレックスなどを描きながら、父が残したイラク問題と対峙することとなった息子ブッシュの姿を心情に寄り添いつつ映し出します。なお、こちらではジョシュ・ブローリンがブッシュを見事に演じています。

 興味深いことに、ブッシュ時代には大統領が登場する作品が数多く製作されることとなりました。そのなかにはリンカーンやルーズベルト、ニクソンといった歴代大統領はもちろん、実在の人物を想起する架空の大統領を登場させるものもあります。ブッシュ政権の時代、波乱に満ちた社会状況が多角的にフィクションの題材を提供したのだといえるかもしれません。

理想の大統領?

 そんなブッシュ以後のアメリカで、バラク・オバマが初の黒人大統領として当選を果たします。名だたるハリウッド・セレブらを含むリベラル層からの熱狂的な支持を受けたオバマ。2009年には早くも『バラク・オバマ 大統領への軌跡』が製作されるなど、盛り上がりを見せます。2011年には、架空のキャラクターでありながら、シチュエーションがリアルなジョージ・クルーニーが監督・主演で『スーパー・チューズデー ~正義を売った日~』が発表されました。骨太な社会派作品を手がけているクルーニーは、アメリカ大統領予備選挙の舞台裏を描く同作に、不正まみれの政治への嫌疑と、理想の政治を切望するメッセージを込めています。

『バイス』 – (C) 2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC. All rights reserved.

 ケネディや古くはリンカーンと重ね合わされることもあったオバマ大統領。再選をかけた2012年には、スティーヴン・スピルバーグによる『リンカーン』がアメリカで公開されます。大統領選挙の目前に控えた時期でした。南北戦争末期、奴隷制の廃止を目指して苦悩するリンカーンをダニエル・デイ=ルイスが熱演しました。

 2012年が奴隷解放宣言の150周年にあたることもあり、ほかにもリンカーンを題材にした作品が製作されています。2010年には、ロバート・レッドフォード監督による、リンカーン大統領暗殺犯の一味としてアメリカ初の女性死刑囚となったメアリー・サラットを描いた『声をかくす人』、2012年にはティム・バートン製作で、リンカーンがヴァンパイアを退治するハンターだったという奇想天外な設定の『リンカーン/秘密の書』が発表されています。

アメリカ映画は今後、社会をどう描くのか?

 オバマ時代の2013年には、実在したホワイトハウスの黒人執事の人生をモデルにした『大統領の執事の涙』が作られます。黒人の視点からアメリカの戦後史が改めて語られていくのは、この当時のオバマという存在あってこそでしょう。しかし、一方でリンカーンやケネディの再来と謳われながらも、その期待がしだいに失望に変わり始めたのも事実です。そんななかビンラディン殺害計画を描く『ゼロ・ダーク・サーティ』(2012)、オバマに批判的でもあったクリント・イーストウッド監督による『アメリカン・スナイパー』(2014)など、長引く戦争を正面から描く作品も登場することになります。

『ゼロ・ダーク・サーティ』 – Jonathan Olley (C) 2012 CTMG. All rights reserved.

 ブッシュ時代からの戦争の記憶と、オバマ時代の社会の多様性……それらの反動が現在のトランプ政権誕生へと繋がったと見ることも可能です。そんななか、ハリウッドはトランプを“敵”として批判的な見解を積極的に表明しています。その結果として、ブッシュ時代を相対的かつ客観的に見直した『バイス』のような作品が生まれたともいえます。また、ドラマ「ハウス・オブ・カード 野望の階段」(2013〜2018)や「サバイバー:宿命の大統領」(2016〜)など、長いスパンで政治を直接的に描く作品も目立ってきています。

 いま、ハリウッドは台頭するトランプのポピュリズムを批判するとともに、作品のなかで背景にある社会的な事象や過去の歴史に言及することで警鐘を鳴らしています。そうした政治とアメリカ映画の複雑な関係が今後も続いていくことが予想されます。

参考文献:村田晃嗣著「大統領とハリウッド アメリカ政治と映画の百年」中央公論新社刊

文・構成:シネマトゥデイ編集部 大内啓輔

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密猟者は……映画『バンビ』鑑賞の刑!?

アメリカの中西部に位置するミズーリ州。銃の保有率は50州中21位ですが、41.7%の人が銃を持っているとのこと。そんな州のローレンス郡というエリアで、ある男性が違法に鹿を殺害したことを理由に逮捕されました。

でも、本題は刑罰について。

裁判官は禁錮1年の判決を下し、月に1度はディズニー映画『バンビ』を鑑賞するようにと指示。

きっと男性の心境に変化が現れることを期待しているのでしょう。母親がハンターに殺されたシーンは涙を誘いますからね。

前例のないユニークな刑罰です。

Top image: © iStock.com/jakkapan21, iStock.com/Dreamcreation, 2019 TABI LABO

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